憲法 人権享有主体 (1日目)

今日から憲法をやることにしました。

それぞれの人権

外国人の人権:日本国民ではないため、「国民の権利」が保障されるかが問題となる。→権利の性質上適用可能なものは保障される

法人の人権:人間ではないため、人権が保障されるかが問題となる。→権利の性質上適用可能なものは保障される

公務員の人権:人権保障はあるが、職務の公共性や中立性といった観点から一般国民よりも広く規制されてもやむを得ない

在監者の人権:人権保障はあるが、刑事施設に収容されているという特殊な環境に置かれているといった観点から一般国民より広く規制されてもやむを得ない

未成年者の人権:人権保障はあるが、心身の発達が未成熟であるといった観点から特別な規制があってもやむを得ない

外国人の人権

人権保障:基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き在留外国人に対しても等しく及ぶ(マクリーン事件:最大判昭53.10.4)

出入国関係出国の自由は保障される(最大判昭32.12.25)  入国の自由は保障されない(最大判昭32.6.19)  再入国の自由は保障されない(森川キャサリン事件:最判平4.11.16) 

指紋押捺を強制されない自由みだりに指紋の押捺を強制されない自由は保障される(指紋押捺拒否訴訟:最判平7.12.15)

社会権:社会保障上の施策における在留外国人の処遇について、国がその政治判断により決定し、限られた財源の下で福祉的給付を行うにあたり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことはできる(塩見訴訟:最判平1.3.2)

選挙権外国人の選挙権は保障されない(最判平7.2.28)  憲法93条2項の「住民」に外国人は含まれない(最判平7.2.28)  地方選挙について法律をもって定住外国人に選挙権を付与する措置を講ずることができる(最判平7.2.28)

公務就任権外国人が公権力の行使等を行う地方公務員に就任することは、本来日本の法体系は想定していない(最大判平17.1.26)  地方公共団体が日本国民である職員に限って管理職に昇任できるとする措置を講ずることは、憲法14条1項に違反しない(最大判平17.1.26)

政治活動の自由政治活動の自由(日本の政治的意思決定やその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないものは除く)は保障される(マクリーン事件:最大判昭53.10.4)

法人の人権(法人による寄付の可否)

会社と政治献金会社が政治献金をすることはできる(八幡製鉄事件:最大判昭45.6.24)

強制加入団体と政治献金税理士会が政治献金をすることはできない(南九州税理士会政治献金事件:最判平8.3.19)

強制加入団体と復興支援金司法書士会が震災により被災した別の司法書士会に義援金として寄付をすることはできる(群馬司法書士会事件:最判平14.4.25)

公務員の人権(堀越事件:最判平24.12.7)

事案の概要:国家公務員Xが共産党を支持する目的で、同党の機関紙である「しんぶん赤旗」を投函して配布していたことが、公務員の政治的活動を禁止している国家公務員法、人事院規則に違反するとして起訴された事件。

争点:公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為を禁止することは許されるのかどうか。

結論:許される。

判旨のポイント:公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し、これに対する国民の信頼を維持するために、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為を禁止しようとする目的は合理的であり正当なものといえる。禁止される行為は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為に限られその制限は必要やむを得ない限度にとどまる

森川キャサリン事件(最判平4.11.16)

米国籍のX(森川キャサリーン)は、日本人と結婚し、日本に居住していた。外国人登録の際の指紋押捺が「品位を損ねる」として、拒否。罰金一万円の判決を受ける。1982年11月、Xは韓国旅行のために再入国申請をしたところ、不許可。Xはこの処分を不服とし、処分の取消し及び国家賠償請求を求め、出訴。1審、2審はXの請求棄却としたため、Xは上告。

結果:上告棄却

  • 我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではない。
  • 外国人の再入国の自由は、憲法22条により保障されない。
  • 指紋押捺拒否を理由とする法務大臣の本件不許可処分は、社会通念上、著しく妥当性を欠くということはできず、裁量権の濫用による違法はない。

マクリーン事件(最大判昭53.10.4)

外国籍のマクリーン(X)は、在留期間を1年とする許可を得て、日本に入国した。その後、Xは、法務大臣Yに対して、在留期間延長の申請をした。しかし、「無断転職」および「政治活動(※)」を理由に、120日の更新しか認められず、その後、更新は不許可となった。※ベトナム戦争の反対運動、日米安保条約の反対運動などを行っていた。そこで、XはYの更新不許可処分を不服として、その取消しを求めて出訴した。

出入国管理令では、「在留期間の更新については、法務大臣がこれを適当と認めるに足りる相当の理由があると判断した場合に限り許可できる」としている。そのため、更新事由の判断を、法務大臣の裁量に任せて、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨であると解される。したがって、外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められる。ただし、その裁量について、裁量権の範囲を超え、またはその濫用があった場合は違法となる。そして、今回、法務大臣が、外国人の政治活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断し、更新不許可の処分を下した。結果、「裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものということはできない」として、違法ではないとした。

判例では、「基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき」としているので、原則、外国人にも人権保障はおよぶ。しかし、外国人の人権保障は、外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎず、外国人在留制度の枠を超える部分は、人権保障が及ばないとしている。

政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動など、外国人の地位にかんがみて、これを認めることが相当でないと解されるものを除いて、その保障がおよぶ。そして、外国人Xの事実に対する法務大臣の不許可処分は、「明白に合理性に欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性に欠くことが明らかである」とはいえないので、在留中の政治活動を理由に更新を不許可としたことは違憲ではない、とした。

八幡製鉄事件(最大判昭45.6.24)

八幡製鉄の代表取締役Yが、自民党に対して政治献金をした。これについて株主Xは、この寄付は、定款所定の目的範囲外であり、Yの行為は商法で規定されている「取締役の忠実義務違反」だとして、Yに対して損害賠償責任を追及する訴えを提起するよう会社に求めた。しかし、会社は訴えを提起しなかったので、株主Xは、Yを被告として、株主代表訴訟を提起した。

政党は、議会制民主主義を支える不可欠な要素として、憲法上その存在を当然予定されている。また、政党のあり方は国民の重大な関心ごとである。

性質上可能な限り、法人にも憲法上の人権が保障される

性質上可能な限り、法人にも憲法上の人権が保障されているため、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持したり、反対したりするなどの政治的行為をなす自由を有する。そして、政治献金もまさに、政治的行為の一環であり、会社により政治献金がなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄付と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。(憲法上、法人献金と個人献金を別々に扱うべき、とはしていない)したがって、法人についても政治献金の自由が認めれられる。

南九州税理士会事件(最判平8.3.19)

税理士会が政党に政治資金を寄付することを決定し、構成員にその協力を義務付けることは、法のまったく予定しないところであり、たとえ税理士にかかわる法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、税理士会の目的の範囲外の行為と言わざるをえない。よって、寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の決議は、税理士会の目的の範囲外の行為であるため、無効である。

群馬司法書士会事件(最判平14.4.25)

本件拠出金の目的は、阪神大震災で被災した、兵庫県司法書士会に対する経済的支援を通じて、司法書士の業務の円滑な遂行による公的機能の回復に資することである。そして、司法書士会は、司法書士の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るため会員の指導等を行うという目的を遂行する上で直接または間接に必要な範囲で他の司法書士会への協力、援助等をすることができる。したがって、本件拠出金を寄付することは、司法書士会の目的の範囲に含まれ、その権利能力の範囲内にあるというべきである。

本件拠出金の調達方法についても、それが公序良俗に反する等会員の協力を否定すべき特段の事由がある場合を除き、司法書士会は多数決原理に基づきみずから決定をすることができる。司法書士会が強制加入団体であることを考慮しても、本件負担金の徴収は、会員の政治的または宗教的立場や、思想良心の自由を侵害するものではなく、負担金の額も会員に過大な負担を課するものではない。そのため、本件負担金の徴収について、公序良俗に反するなどの特別な事情があるとは認められないため、本件決議は有効である。

塩見訴訟(最判平1.3.2)

1934年に大阪市に生まれたX(韓国籍)は、幼少期のはしかが原因で失明。1959年には改正前国民年金法別表1級に該当する状態。1970年12月にXは日本国籍を取得。その後、障害福祉年金の受給申請をするもY(大阪府知事)は却下。(認定日に韓国籍であったため)Xはこれを不服とし、処分の取消しを求め、出訴。1審、2審はXの請求棄却 Xは上告(改正前国民年金法の国籍条項は憲法違反と主張)

結果、上告棄却

  • 国民年金制度は、憲法25条2項の規定の趣旨を実現するために創設されたもので、全額国庫負担の無拠出制の年金であって、立法府は支給対象者の決定について、広範な裁量権を有している。
  • 社会保障上の施策においては、在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、政治判断により決定することができる。
  • 限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許されると解される。

※1982年に難民条約批准による国民年金法改正があり、国籍要件を定めた条文は全面削除された。外国人でも福祉年金が受給できるようになった。

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